ゲーム開発で挫折する中高生の8割が、コードの基礎で躓いている|本格的に作る前に固めるべき土台とは

2026-05-05

中学生
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プログラミング
ゲーム開発
学習方法
競技プログラミング
星出 遼汰郎

代表講師 / カリキュラム監修

星出 遼汰郎ほっしー

中学生・高校生向けのプログラミング学習サービス「HaruCoder」を運営しています。指導歴は5年以上、これまでに100人以上の生徒を教えてきました。プログラミングの楽しさ、そして「考えることそのものの楽しさ」を伝えることを大切にしています。


「将来は自分でゲームを作りたい」

プログラミングを始める中学生・高校生の入り口として、いちばん多い動機がこれです。

ただ、教える側として中高生のプログラミング学習をずっと見てきた肌感覚で言うと、ゲーム開発に挑戦する中高生のうち、8割くらいは "ゲーム開発の難しさ" にたどり着く前に挫折します。

そして、その挫折の正体は、ゲーム特有の物理計算でも 3D でもアニメーションでもなく、「コードそのものの基礎」 にあることが、ほとんどです。

この記事では、

  • 中高生がゲーム開発で挫折する本当の理由
  • プログラミング塾を運営する中で実際に経験した「ゲーム開発から競技プログラミングへ」の方針転換
  • ゲーム開発を本気でやりたいなら、何から始めるべきか

を、現場の体感を交えてお話しします。

「ゲーム開発の難しさ」にたどり着けない、という現実

ゲーム開発の本当の楽しさは、たとえばこんなところにあります。

  • ステージのトラップや構造を考え、実装する
  • 敵 AI の動きを工夫して、難易度バランスを取る
  • 演出やエフェクトで「遊んでいて気持ちいい」体験を作る

こういう ゲームらしい面白さ に到達した子は強いです。そこから一気に伸びていきます。

ただ、その地点にたどり着くまでには、もう一段手前に超えなければいけない壁があります。 それが、「コードの基礎」 という壁です。

僕たちも、最初は「ゲーム開発」を教えていた

今でこそ競技プログラミングを中心に教えている僕たちですが、最初はゲーム開発を中心にプログラミングを教えていました。

「ゲームを作りたい」と言って来てくれる子が多いし、入り口としても自然だったからです。

ところが、教えていく中で、同じ場面で詰まる子がとても多いことに気づきました。

よくある詰まり方

たとえば、「右ボタンを押したらキャラクターが右に動く」という動作。これを 日本語で説明 することは、ほとんどの子ができます。

「右ボタンを押したら右に動くだけでしょ。」

というふうに。 ところが、

「じゃあそのとき、コードの中では何が起きてるの?」

と聞くと、急に説明が止まってしまう。こういうケースが本当に多かったのです。

  • 毎フレーム何らかの処理が動いていること
  • その中で「右キーが押されているか」を判定する条件分岐が走っていること
  • 押されていれば、変数の値を増やすこと
  • 変数の値を増やすと、対応する座標にキャラクターが描画されること
  • 実数を扱うために、その変数はfloat型・double型であること
  • ...

「右ボタンで右に動く」のコードの中で起きていること(毎フレームのループ → 条件分岐 → 座標変数の更新)

こうした "コードの中で起きていること" を追えないまま、それでも「動くゲーム」だけは作れてしまっている、という状態の子がたくさんいました。

「動いた → でもそこから先に進めない」

このタイプの子は、最初の "動くゲーム" までは作れます。動画やチュートリアルの通りに進めれば、形にはなるからです。

でも、そこから先で必ず止まります。

  • 「もう少しキャラの動く速度を速くしたいな」と思っても、どこをどういじればいいか分からない
  • なんとなくいじってみても、エラーが出た瞬間にお手上げ
  • 「敵キャラを 1 種類追加したい」のような、ちょっとした応用ができない(実はこれは「ちょっとした応用」ではなく、それなりに大掛かりな「仕様変更」です)

ゲーム開発の本当の面白さは、まさにこの 「自分で調整する」「自分で機能を足す」 ところから始まります。 ところが多くの子は、その入り口の扉を開ける前に — コードの基礎が分からないまま — 立ち止まってしまうのです。

余談|高専でも、ゲーム開発の授業は4年生から

少し余談ですが、僕自身は高専(5 年制の高等専門学校)の出身です。

通常の高校と違って、プログラミングを 1 年生から本格的に学びます。その中で、ゲーム開発のプログラミングを扱う授業が始まったのは、4 年生になってから でした。

  • 1〜3年生:基礎文法・アルゴリズム・データ構造などをみっちり
  • 4年生〜:その上で、ゲーム開発のような応用領域に進む

という設計です。ゲーム開発を "自分の手で" 動かせるようになるには、その下にしっかりした基礎が必要 — 教育の現場で長く積み上げられてきたカリキュラム設計が、それを物語っています。

方針転換:「いっそ、コーディングを腰を据えて教える」

塾の話に戻します。

最初の壁が "ゲーム特有のもの" ではなく "コーディングの基礎" にあると分かってきたとき、僕たちは方針を切り替えることにしました。

ゲーム開発を表面的に追いかけるよりも、いっそコーディングそのものを腰を据えて教えよう。

そうして導入したのが、競技プログラミング です。

競技プログラミングでは、

  • 入力を受け取り
  • 条件分岐や繰り返しを使ってロジックを組み立て
  • 期待される出力を返す

という、コードのいちばん素の部分 をひたすら繰り返します。派手さはありません。でも、ゲーム開発で詰まっていた "コードの中で起きていること" に、まっすぐ向き合う訓練になります。

教え方を変えてから、目に見えて伸びた3つの力

競プロ中心に教え方を切り替えてから、生徒の中で次のような力が、はっきりと伸びていきました。

1. 自力でコードを書く力

お手本を写すのではなく、白紙の状態から自分でロジックを組み立てて書く ことができるようになります。

これは、ゲーム開発で「自分で機能を足したい」と思ったときに、絶対に必要な力です。

2. コードを読んで、ロジックを追える力

他人の書いたコード(あるいは AI が出力したコード)を見たときに、

  • どこで何が起きているか
  • なぜこの結果になるのか

を、ちゃんと追える力です。

ゲーム開発では、ライブラリやサンプルコードを読む場面が山ほどあります。ここが弱いと、結局「呪文をコピペしているだけ」の状態から抜け出せません。

3. エラーを直す力

プログラミングをしていれば、エラーは絶対に出ます。問題は、そこから自力で復帰できるかどうか

競技プログラミングは、ある意味 "エラーとの戦い" です。 WA(不正解)や RE(実行時エラー)が出たコードを見直して、原因を切り分け、修正していくサイクルを、何度も何度も繰り返します。

この訓練を経た子は、ゲーム開発に進んだときに、エラーが出ても怖くなくなる のです。

ゲーム開発をやりたいなら、まず基礎を固める方が結果的に近道

念のため強調しておきますが、僕たちは 「ゲーム開発はやらないほうがいい」 と言っているわけではありません。

ゲーム開発は、

  • 完成した作品を人に見せられる、最高に楽しい学び方
  • 創造性や表現力が育つ、すばらしい入り口
  • それ自体が立派な進路にもつながる分野

です。

ただ、順番を間違えると、ほとんどの子が "面白いところ" に到達する前に脱落してしまう — これが、僕たちが現場で痛感したことでした。

「ゲームを作りたい」という気持ちを大事にしたいからこそ、まずはコードの基礎を、じっくり固めてほしい。 基礎がついた子は、その後ゲーム開発に進んでも、自分で機能を考え、自分でエラーを直し、自分で作品を完成させられる ようになります。

中高生の「コードの基礎」を固めるなら、競技プログラミング

繰り返しになりますが、僕たちが現場で出した結論は、中高生がコードの基礎を固めるなら、競技プログラミング(特に JOI 一次予選レベル)が一番効率がいい というものです。

その理由を、別の切り口でまとめた記事もあります。あわせて読んでいただくと、全体像がよりはっきりすると思います。

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まとめ|ゲーム開発の前に、コードの "土台" を

  • ゲーム開発に挑戦した中高生の多くは、ゲーム特有の難しさにたどり着く前に「コードの基礎」で挫折する
  • 「動くゲーム」までは作れても、速度を変える・機能を足す・エラーを直す の段階で必ず詰まる
  • 高専のカリキュラムでも、ゲーム開発の授業は基礎を学んだあとの 4 年生から
  • 僕たちの塾でも、ゲーム開発から競技プログラミングに切り替えてから、自力で書く力・ロジックを追う力・エラーを直す力 が目に見えて伸びた
  • ゲーム開発を本気で楽しむためにこそ、まずコードの基礎を固めることをおすすめしたい

「ゲームを作りたい」という入り口は、間違っていません。 でも、その夢に最短で近づくためにこそ、遠回りに見える "基礎の道" を最初に通っておく ことが、結局いちばん早い — これが、僕たちが現場で出した答えです。


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